仕事や生活のパフォーマンスに大きな影響を与えるとされている睡眠。
しかし“日本における睡眠障害の頻度と健康影響”
https://www.niph.go.jp/journal/data/61-1/201261010002.pdf
によると、全国でランダムに抽出された20歳以上の男女3,030人に調査をした所、男性が22.3%、女性が20.5%の割合で睡眠障害(入眠困難or中途覚醒)を抱えているというデータが確認できました。
睡眠障害はただ夜眠れない辛さだけでなく、日中の倦怠感、眠気、集中力の低下など仕事のパフォーマンスにも大きく関わってきます。
今回Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences(精神神経医学および臨床の神経科学雑誌)の実験結果を含む1,108人の不眠症患者に対する鍼治療結果がプラセボ治療(偽薬)より優れていること、睡眠の質を改善し、不安を軽減、メラトニンホルモンの分泌を増加させた。という海外の記事をご紹介したいと思います。
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鍼治療は、最新の研究により不眠症の緩和に効果的であることがわかっています。いくつかの調査は重要な臨床所見をもたらします。
1つ目の研究では、鍼治療がプラセボ対照よりも優れていることがわかりました。
2つ目の研究では、鍼治療が睡眠を改善し、不安を軽減、メラトニンの神経ホルモン内因性分泌を増加させるのに効果的であることがわかりました。
1,108人の患者のメタアナリシスでは、睡眠を改善するために、鍼治療が偽薬/プラセボ対照よりも優れていることがわかりました。この研究ではピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)スコアを使用して結果を検証しました。
耳鍼、体への鍼治療、電気鍼治療すべて不眠症に対し効果的であることがわかりました。
トロント大学、および精神保健センターの研究者によってJournal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciencesに発表された別の調査では、不眠症および不安症の治療に鍼治療が効果的であることがわかりました。鍼治療を通して、患者は睡眠を改善、そして不安を軽減しメラトニン(aMT6)の内因性分泌物を増加させました。
合計10回の鍼治療が5週間にわたって行われました。睡眠時間、睡眠の質、倦怠感、および幸福感に改善が見られました。研究チームは、夜間のメラトニン分泌、睡眠開始の睡眠ポリグラフ測定、覚醒指数、総睡眠時間、および睡眠効率の改善をスコア化しました。不安スコアの有意な減少も見られました。
メラトニンレベルの夜間の上昇は、睡眠の改善と平行していました。研究者たちは、「鍼治療は全体的な睡眠の質を改善し、不安軽減に大きな影響を及ぼしたため、注目に値する」と述べています。 彼らは、「鍼治療は不安を抱える被験者の不眠症の治療的介入として価値があることが示されたため、それらの患者に対する薬物療法の代替となる可能性がある。」と付け加えています。
関連する調査として、エモリー大学とアトランタメディカルセンターの研究者は、PTSDと脳損傷のある退役軍人の睡眠障害の治療に鍼治療が効果的であることを発見しました。研究者らは、鍼治療は、軽度の外傷性脳損傷(mTBI)の退役軍人の主観的および客観的な睡眠パラメーターの両方に有意な改善をもたらすと結論付けました。これには、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の退役軍人が含まれます。研究者たちは、「鍼治療は、経験を多く積んだ軍人が抱える大きな悩みに対して、特に扱いにくい問題であった睡眠障害に有意義な救済を提供する。」と述べました。
別の調査では、乳がんの生存者の睡眠の質を改善するために、鍼治療は薬物療法よりも効果的であると結論付けています。ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)、メモリアルスローンケタリングがんセンター(ニューヨーク)、およびメモリアル大学の研究者は、ほてりのある女性の乳がん生存者の入眠時間と効率を改善するために、電気鍼療法がガバペンチンよりも優れていると結論付けました。対照臨床試験において、研究者らは、鍼治療は睡眠時間を改善し、入眠潜時を大幅に改善すると結論付けました。
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今回紹介した記事によると、鍼灸治療は単に不眠症改善だけでなく、不安の軽減や、心のトラウマによる不眠、癌治療後の不眠にも効果があることがわかりました。
そして入眠障害や中途覚醒だけでなく、メラトニンという睡眠の質を改善するホルモンを分泌することから、たくさん寝ても熟睡感の得られない人にも鍼治療が有効と言えます。
健康の原則として昔から「快食・快眠・快便」と言われてきました。寝つきが良くないことはとても辛いものです。鍼治療によって夜眠れないという不安感やプレッシャーが無くなることによって、気持ちも少しずつ楽になり、次第に理想的な睡眠サイクルを得られることが期待できます。
ぜひ不眠でお困りの方や、自分の睡眠に満足していない方はぜひ一度鍼灸をお試しださい。
written by 村中僚太(鍼灸師・ケアマネージャー)
国立大学法人筑波技術大学卒後、臨床研修卒。「医道の日本」、全日本鍼灸学会誌等へ論文を掲載。英国SPA会社Steinerにて豪華客船鍼灸師として勤務、優秀なクルーに送られる「Moment that matter]受賞。5年で約4,000人の治療を担当。 訪れた国は50以上、200都市を超える。 現在はジョージアにて「日本鍼灸を海外へ」をテーマに鍼灸院を開業。
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